先日、20年ぶりにトリッカーズの靴を手に入れました。
名門ひしめく靴の聖地ノーザンプトンの中でも最も長い歴史を持つトリッカーズは、プリンス・オブ・ウェールズのロイヤルワラントを持つ由緒正しきシューメーカーです。
今までなんとなくでしか知らなかったロイヤルワラントでしたが、バートン購入を機に調べてみたら意外と面白かったのでまとめてみました。
王室御用達と宮内庁(皇室)御用達
ロイヤルワラントは王室が企業や個人に対して認定する御用達の証です。日本で言うと宮内庁御用達や皇室御用達に近いイメージですが、日本の御用達認可制は1954年(昭和29年)に廃止となっているので、現在の日本における御用達は過去の実績などを元にした自称ということになります。
一方、英国王室御用達は12世紀ヘンリー2世の代から始まり、800年以上経った現在も認可制を維持しています。
その基準は王族の方々が実際に使って気に入ったものというのはもちろんのこと、安定した品質やサービスを継続的に提供しているという歴史的裏付け、人の手により生み出される英国伝統のクラフツマンシップを有するかどうか。また、近年では品質と価格のバランス、環境への配慮なども考慮されているそうです。
認定を受けた者はロイヤルアームス(紋章)を掲げ、By appointment(御用達)を名乗ることができます。
例えばトリッカーズであれば、プリンス・オブ・ウェールズの三本羽根の紋章に”By Appointment to HRH The Prince of Wales”です。
ちなみにHRHはHis/Her Royal Highnessの略語で、意味は日本語で言う「殿下」。
これが国王の場合は「陛下」の意であるHis/Her Majestyとなり、HMと略されます。現在の君主であるエリザベス二世は”HM The Queen”と表記されます。
産業発展に寄与するロイヤルワラント
ロイヤルワラントは一度認可されれば永久にというわけではなく、5年に一度、王室御用達協会による再審査が行われます。
その際、基準を満たさなくなればもちろん剥奪もあり得ます。なので、ロイヤルワラント保持者は絶え間ない努力が必要となり、結果として品質の安定や伝統の保存につながっています。
ロイヤルワラントホルダーはその業界のリーディングカンパニーである場合が多く、その企業努力は業界全体に波及し、ひいては英国産業全体の発展へと繋がっているとも言えます。
ロイヤルワラントは3種類
現在の英国のロイヤルワラント(王室御用達)は認定者によって3種類があります。
上) 女王 エリザベス2世
左下) エディンバラ公 フィリップ王配
右下) ウェールズ公 チャールズ皇太子
ロイヤルワラントの認定権を持っているのは女王夫妻とその長男の3人みということになります。
(※2002年にエリザベス皇太后が亡くなるまでは4人)
このロイヤルワラントはどれかひとつだけではなく、複数の認定を受けることもあります。
例えば革靴の王様とも言われるジョンロブはエディンバラ公とウェールズ公の双方から認定を受けています。
また、オイルドクロスジャケットでおなじみのバブアーなどは3者から認定を受けている稀な例です。
ロイヤルワラント保持者の数は現在800前後と言われています。靴ではトリッカーズ、ジョンロブをはじめ、クロケット&ジョーンズやロークなどもロイヤルワラントホルダーです。
ファッションでは前述のバブアーやバーバリー、ジョンスメドレー。車ではアストンマーチン、ジャガー、ベントレーなどが有名ですね。
日常に溶け込むロイヤルワラント
高級品ばかりに付いているイメージのロイヤルワラントですが、実はそんなこともないようです。
調べてみると、ケチャップでおなじみのハインツやペッパーソースのタバスコ、またドッグフードメーカーなどもロイヤルワラントの認定を受けています。
また、イギリス以外でも英国ロイヤルワラントに認定されるケースもあるようです。例えばフランスではドン・ペリニヨンを擁するモエ・エ・シャンドンを始め、クリュグ、ヴーヴ・クリコといったシャンパンメーカーがロイヤルワラントを与えられています。王室の方々はシャンパンがお好きなのですね。
アメリカでは前述のハインツ、タバスコ、またコーンフレークで有名なケロッグやコカコーラなど。認定されているのはイギリスの現地法人の場合が多いですが、私たちの生活にも馴染みのある顔ぶれも名を連ねています。
今後のモノ選びに
このように、意外と身近なものでもロイヤルワラントを受けていることがあるので、気になるブランドを調べてみると面白いです。
こちらから調べることができます。
The ROYAL WARRANT HOLDERS Association
今後、靴や服に限らず、革小物や飲食物に至るまで、モノを選ぶ際に調べてしまいそうです。
もちろん、ロイヤルワラントが付いているからといって、手放しに礼賛するつもりはありませんが、モノ選びの基準のひとつにしてみるのも良いかもしれませんね。
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