先日買ったトリッカーズのブーツ。
今回手に入れたのは「Malton(モールトン)」というカントリーブーツです。
品番はM2508。
ご存知の方も多いと思いますが、トリッカーズのカントリーブーツにはもうひとつ有名なM5634「Stow(ストウ)」というブーツがあります。
モールトンとストウは同じデザインのフルブローグブーツで、使われる木型もどちらも同じ4497S。
見た目全く一緒のこの2足の違い、気になりますよね。
実は答えは、どちらも同じ。です。
もちろん最初から同じだった訳ではありません。
元々シーシェイドと呼ばれるタンカラーのレザーを使ったカントリーブーツをM2508(モールトン)、その他のカラー(ブラック、エイコン、マロン、エスプレッソなど)のレザーを使ったものをM5634(ストウ)と区別していたそうです。ところが、様々な別注などを作るうちに曖昧になり、今ではメーカーでも明確な分類はしていないのだとか。。。
と、ここまではよくある話で、調べればもっと詳しく解説しているサイトが見つかると思います。
この状況、かなり長く続いているようなのですが、メーカーは是正する意思はないということなのでしょうか。
どう呼ぶか、それが問題
まぁ、名前がどうあれ、エスプレッソのカントリーブーツであることに変わりはないので、ただ履いている分には何ら問題ありません。
ただ、例えばこうしてブログで紹介したり、インスタグラムにアップしたり、他人に靴の説明をしたりするときに、呼称をどうするかとても迷います。
ライニングに書かれている通り紛れもなくM2508なので「モールトン」と呼ぶのが一番良いのでしょうが、それだと同じものが欲しいと思ってくださった方がこのエスプレッソのブーツに辿り着けないかもしれない。
では「ストウ」と呼べば解決かと言うと、なんだか事実ではないことを言っているような感じがして気が引けます。もちろん「モールトン」と「ストウ」を併記なんてまどろっこしいことはしたくありません。
いっそのこと「カントリーブーツ」と呼べば無難に解決できますが、多少でも靴が好きな者として、一般名詞で呼ぶのはなんだか物足りなさを感じてしまいます。レッドウィングを全て「ワークブーツ」と呼んでいるようなものです。
ブランディングとして問題は?
自分の靴をどう呼ぶかはそれぞれの所有者に委ねられても問題ないことではありますが、これってそのままブランディングの弊害にはなっていないのでしょうか。
さすがに本国の公式サイトではシーシェイドをM2508(モールトン)、その他のレザーをM5634(ストウ)と表記しています。でも、事実として私の手元にあるブーツは本来シーシェイドモデルに用いられるM2508(モールトン)でありながら、エスプレッソのレザーで仕立てられています。
同じものに2通りの名前があるというのはブランドビジネスとしてはマイナスのような気がします。
度々レッドウィングの話になって恐縮ですが、かつて抜群の知名度を誇った「アイリッシュセッター」から「クラシックワーク」への名称変更は、市場でのレッドウィングの存在感をやや薄れさせてしまったと感じます。
そんな名称変更から20年近く経って、レッドウィングは「アイリッシュセッター」の復活を決めました。
カントリーブーツはトリッカーズのアイコン的存在ですが、いくら唯一無二の存在とは言ってもブランド戦略は必要でしょう。
現在、消費者個人が発信して消費を喚起するいわゆる口コミはマーケティング上無視できない要素だと思います。何と呼ぶか迷うということは、呼び方が統一されず、情報の訴求力の低下につながりかねません。
ハッシュタグから見る呼称の分散
分かりやすい例で言えばインスタグラムのハッシュタグ。
ハッシュタグは同じタグが増えれば増えるほど、広告としての価値が高まります。
トリッカーズのカントリーブーツにまつわるハッシュタグの件数はどのようになっているでしょうか。
ハッシュタグ | 件数 |
#trickersstow | 329 |
#trickersmalton | 52 |
#trickerscountryboots | 23 |
#trickersbourton | 790 |
件数は2018年12月3日現在
参考として短靴のバートン(#trickersbourton)も調べてみました。
カントリーブーツ関連としては#trickersstowが大きな割合を占めるものの、同じカントリーブーツを指す#trickersmaltonと#trickerscountrybootsを足しても短靴の#trickersbourtonの半分強にしかなりません。
1つの投稿に#trickersstowと#trickersmalton、#trickerscountrybootsのうち複数が付けられている場合もあることを考えれば、投稿数は半分以下の可能性もあります。
これが日本語になるとさらに顕著です。
ハッシュタグ | 件数 |
#トリッカーズストウ | 22 |
#トリッカーズモールトン | 29 |
#トリッカーズカントリーブーツ | 156 |
#トリッカーズバートン | 535 |
件数は2018年12月3日現在
カントリーブーツとバートンのユーザー数、もしくは投稿数自体にそこまでの差があるとは考えられません。むしろ肌感覚としてはブーツの方が多いくらいです。
この乖離こそ、呼称の統一がなされていないことによる情報分散化の結果と言えるのではないでしょうか。
特に日本においては「ストウ」「モールトン」いずれのモデル名も浸透していない可能性も見て取れます。
そんなところが実は好き
少し批判的な書き方になってしまいましたが、実はトリッカーズのそんな側面が好きだったりします。
伝統あるシューメーカーなので、昔ながらの職人気質が今も残っているのでしょうか。悪く言えば人気に胡座をかいているということになってしまうのかもしれませんが、世界的に見ても有名なシューメーカーだからこそ許されるこの杜撰さ、細かいことを気にしない大らかさが、変に宣伝上手なブランドより好感が持てます。
ブランド自体が好きになると、他のモデルも履いてみたくなるものです。
さて、次は何にしましょうか。
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